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行徳神輿を見に台湾のカオスなお寺へ行ってきた。 龍崎文衡殿(台南市)

行徳神輿を見に台湾のカオスなお寺へ行ってきた。 龍崎文衡殿(台南市)

「行徳千軒寺百軒」としてたくさんの寺社があった行徳には神仏具を造る宮大工が多く住み、江戸時代中期頃より神輿の製造が盛んに行われていました。
行徳での神輿製作は後藤神輿店・浅子神輿店・中台製作所の3軒で担っていましたが、平成に入り後藤神輿店・浅子神輿店が廃業したため、現在は中台製作所が行徳唯一の神輿製造元として稼働中です。

日本のお祭り文化の象徴ともいえる神輿。
最近は海外でも人気があるらしく、神輿渡御を見物する外国人観光客の姿も目にするようになりました。
ときには外国人の方が神輿担ぎに参加したり、さらには実際に購入してしまうことも。

2015年の初め、台湾の寺院に行徳神輿が奉納されたというニュースを目にしました。
市川よみうりの記事によると、お寺の信徒の方が中台製作所を訪れて購入を決めたそうです。
海外への奉納は中台製作所にとって創業以来初だとか。そりゃそうでしょ。

海を渡って奉納された行徳神輿は、このようなかたちで展示されています。
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この写真日本国内じゃないの?と感じてらっしゃいませんか?
いや本当に行って見てきたので、ぜひ最後まで読んでくださいませ。
このお寺、なかなかカオスですから。


2017年2月上旬のある日。
前日台南入りした私は、翌朝早速行徳神輿が奉納されている場所へ。
在来線の台南駅前バス停から、紅幹線と呼ばれる路線バスに乗り込みました。
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バスに揺られること約30分、途中の關廟國中バス停で紅11バスに乗り換えです。
この紅11路線、一日7往復しかないので乗れなかったらこの時点でアウトです。
比較的余裕を持った乗り継ぎしているはずなのですが、万が一バスが来なかったらとヒヤヒヤしながらのバス待ちでした。
幸いにも少々遅れたぐらいで無事バスは現れましたが。
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しばらくすると街並みを抜け、山道をぐんぐんと上っていくバス。
異国の見知らぬ場所で次第に心細くなるいっぽうでした。
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乗り換えたバスに揺られること約15分、ほぼ時刻表通りに目的地の龍崎文衡殿へ到着しました。

こちらが台南市の山中にある龍崎文衡殿。
中華テイスト満載の真っ赤でゴージャスな正殿に台湾らしさを感じます。
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行徳神輿が展示されているのは別棟の義徳館。
土日祝(※訪問当時。文末参照のこと)の9時30分より開放されるそうなのですが、その時刻を過ぎてもまだ閉鎖中。
ここでまたしても一抹の不安が。
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開館時刻から10分ほど過ぎた頃、ようやく義徳館の扉が開きました。
本日の一番乗りは日本人の私。

館内に入ってすぐ目につくところに行徳神輿は展示されていました。
紛れもなく中台神輿製の行徳神輿です。
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神輿の隣にある説明書き。
中国語のため書かれている内容は全くわかりませんが、千葉県市川市や中台製作所の文字を見てとれることができました。
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サイズは一尺八寸(54cm)と小ぶりの大人用神輿。
軒面がまっすぐな屋根をもち塗装せず無垢で仕上げた延屋根型白木神輿。
駒札には「龍崎文衡殿」、作人札には「神輿師 中台祐信作 市川市本行徳」と記されています。
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奉納された当時備えられていた担ぎ棒が取り外され、中華式の台座の上に乗せられています。
現地のお祭りに合わせて付け替えられたようです(お祭りの様子はこちらの動画にて)。
モチーフなどが日本のものとは全く異なりますが、精巧な浮き彫りが施された美しい台座ですね。
日本からきた神輿が大切にされているのが伝わってきます。
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台湾人芸術家の彫刻作品など美術品が展示されている義徳館。
日本のものは行徳神輿の他に鎧や人力車も展示されています。

遠い地でわが町行徳とのご縁を実感した後は正殿へ。
「關公」こと三国志の猛将「關羽」を主神として、さまざまな神様が祀られています。20170204IMG_8187.JPG

実はここからがカオスの本番。
台湾では身近な人や物が神様として祀られることが珍しくないのですが、このカオスさはまず他の寺院ではありえないかと。

どこがどうカオスかというと、唐突に等身大マイティ・ソー様ですよ。
神は神でも北欧神話の雷神、東洋のお寺にこれはありなのか?
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正義の名のもと世の安泰を願う(?)アイアンマン。
「アイアンマン2」で初登場したマーク6とよばれるスーツ着用バージョン。
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かたや正気の名のもと平和のために奮闘する(?)アイアンマン。
こちらのバージョンは「アイアンマン3」のメインスーツであるマーク42。
両脇を固めるのはアイアン・パトリオットとウォーマシーン・マーク2。
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超人ハルクとキャプテンアメリカもいます。
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「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」でハルクと戦ったハルクバスターも。
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実写版「トランスフォーマー」の主役オプティマス・プライム。
日本では「コンボイ」として知られたキャラクターです。
このバージョンは「トランスフォーマー ロストエイジ」ですかね。
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同じく「トランスフォーマー」よりバンブルビー。
こちらも「トランスフォーマー ロストエイジ」のバージョンですかね。
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それにしてもなんなんだ、このマーベル大集合みたいなラインナップは!!

龍崎文衡殿の歴史は意外と浅く、完成してからまだ30年ほどしか経っていません。
約60年前、若くして病に陥った熱心な關公の信徒のもとに關公の霊が現れ、その日を境に病は治癒し事業にも恵まれたという伝説がきっかけで、その信徒の方が20余年の歳月をかけて建立したそうです。

その後廟の代表者のお孫さんが映画「アイアンマン」の大ファンだった縁で 、孫可愛さに等身大ガラス繊維製アイアンマンを寄贈したのをきっかけに、別の信徒の方からも他のキャラクター像が寄贈され、現在のようなアメリカンヒーローが集結したお寺へ変貌したのだとか(旅々台北.comの紹介ページに詳しく書かれていたのですがサイト閉鎖したようで)。

現地の神様とアメリカンヒーローに守られたら心強いことこのうえないでしょうね。
行徳神輿も祀られてますし。

これでカオスは終わりかというとそういうわけではなく、別棟の売店ではエルサとオラフがお出迎え。
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屋外に出てからもカオスは続きます。
朝からカラオケや楽器演奏に興じるご老人や、カセットコンロを持ち込み台湾茶や食事にいそしむ人々。
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龍崎文衡殿には広大な敷地を活かしたバーベキュースペースが存在し、毎年秋には中秋節のバーベキュー大会で大いに賑わうのだとか(※台湾では日本の十五夜にあたる中秋節にお月見バーベキューを行う習慣があります)
またフリーマーケットなどのイベントも開催されるそうですし、ちょっとしたレジャースポットになっているのですね。

行徳名産の神輿と異国でまさかのご対面できるとは。
これもグローバル化の一例なのでしょうか。
龍崎文衡殿は行きづらい場所にありますが、きっと楽しく観光できると思います。
台南訪れる機会がございましたら、ぜひ行徳神輿とマーベル神の数々をご覧あれ。

龍崎文衡殿
台南市龍崎區中坑里中坑3-2號
交通:
臺南火車站(台南駅)北站バス停より紅幹線關廟・龍崎行きに乗車→關廟國中バス停より紅11路線に乗り換え→龍崎文衡殿バス停で下車。
※帰路は關廟轉運站(バスターミナル)での乗換えがスムーズです。
義徳館開放時間:毎週日曜9:30-16:30
※開放日変更または祝日等で臨時開放される可能性有。Facebookページを確認してください。


(おまけ)2017年3月より期間限定にて台湾の大渓という街で中台製作所の神輿が展示されていました。
またしてもわざわざ見に行ってしまいましたので、そのときのレポもご覧くださいませ。

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